見えるもの、見えないもの



■ようこそ先輩■
「課外授業ようこそ先輩」というテレビ番組がある。
落語家、学者、詩人、料理人、ジャーナリスト、CMディレクター、スポーツ選手などいろんな世界で活躍する人が、自分の母校の小学校に行って自分の専門分野で授業をする、という番組。
出る人によってけっこうあたりはずれがある。
やっぱりなにかの分野で優れていることと、それをうまく教えることができるかどうかというのは、またちょっと違う能力なのでしょうか。名選手が必ずしも名コーチならず、というやつで。
この番組の企画自体はすんごく面白いと思う。実際人気番組みたいだし。
などとまた偉そうに書いてしまってます。
いいのかなーそんな批評家気取っちゃって、ていう部分と、やっぱ正直に行かないと読む人も面白くないっしょ、ていう部分とありまして、こんなささいなところですでにあれこれ考えているわけです。

そして今回のテーマは、このこととはまったく関係ありません。

■上履きの並べ方■
その「課外授業ようこそ先輩」に、アーティストの日比野克彦さんが出演した。
僕はそれを見てないですが、本で読みました。
いい授業だなと思いました。ちょっと一部分を紹介します。

1:見えないものと見えるものをあげていく。
【見えるもの】
車、人、机、黒板…
【見えないもの】
人情、夢、勇気、恥ずかしさ…

2:「仲良し」「対決」という見えないものを、上履きや教科書、クレヨンなどの「モノ」の並べ方を通して、見えるようにしてみる(班ごとに)。たとえば、教科書をくっつけて置くと仲がいいように見える、など。

3:より複雑なものにチャレンジ。ドキドキ、さみしい、くやしい、やさしい、元気など。それぞれの班で話し合って、ボール、丸めた紙、帽子、カーテン、風船などの「モノ」を使って(これらの素材も生徒が選び、探したもの)、見えないものを表現していく。

写真がなくてスミマセン。興味ある方は本をご覧ください。見慣れたものが本来あるところとはまったく違うところに、しかも奇妙な組み合わせで並んでいる様はなかなかの味わいです。

■人間彫刻■
それを読んだ2〜3日後、絹川友梨さんの「ジャンルで遊ぶ」というワークショップを受けた。その中で、ファンタジー、ホラー、SF、青春モノ、ミュージカルなどのジャンルを、3〜4人がポーズの組み合わせ(動いてもしゃべってもいけない)で表現してみる、という「人間彫刻」のようなエクササイズがあった。
見事だったのは、青春モノの、男二人がクロスカウンターが決まった瞬間のポーズで(しかも片方は眼鏡がずれている)、近くで女の子が心配そうに見ている、という図。それからミュージカルで、ウエストサイドストーリーのポスターみたく、Y字に脚をあげるポーズの人と指でリズムをとる人のポーズの組み合わせ。見ている人はみんな、それが何のジャンルかすぐにわかったし、実際、「学園青春モノ」「ミュージカルもの」という、目に見えないはずのジャンルが、そのまま絵にあらわれていた。目に見えるカタチになっていたわけです。

■プロセス■
そういうふうに何ともいい感じに見えるカタチに表現されたものを見るのは気持ちがいいもの。「それだよそれ」っていう。「あるある」「わかるわかる」っていう。共感。見る側がそうなんだから、表現する側はなおさらだ。
さて。そんなうまい具合に表現できるに越したことはないけれど、プロセス(過程)もこれまた肝心なところです。

日比野さんの言葉より。
「目に見えたものを通して見えない気持ちとか感情を表現していく。そうすることによって自分の中にある自分でも知らなかった自分らしさがわかるとか、表面には見えない他者の中の、その人固有の個性を見抜く力が培われるんですね。表現することで、目に見えない気持ちとか感情という、人間のいちばん人間らしい部分が磨かれるわけです」


参考
課外授業 ようこそ先輩 9
(NHK「課外授業ようこそ先輩」制作グループ編 KTC中央出版 1999年)


シェアリングTOPに戻る

ホーム